Koji Shiroshita 城下浩伺

空間へのドローイング:高輪ゲートウェイ NEO-CITY ART EXHIBITION

2025.7.27

ZERO-SITE Takanawa Gateway

ZERO-SITE Takanawa Gatewayで開催された「NEO-CITY ART EXHIBITION」にて、《空間へのドローイング:高輪ゲートウェイ》を発表。
高輪ゲートウェイ駅構内、TAKANAWA GATEWAY CITY、そして展示会場であるZERO-SITEにて事前に現地制作を行い、空間の記憶や場所のコンテクストを作品に反映させた。
会場では、ZERO-SITEで制作したドローイングをVRゴーグル(Apple Vision Pro)を通じて鑑賞できる体験を提供するとともに、駅構内やTAKANAWA GATEWAY CITYで制作したドローイングを映像として展示した。
本展は「ZERO COMMUNE vol.4 feat. Hyper geek」の一環として開催され、宇川直宏氏、川村健一氏、竹川潤一氏、谷川じゅんじ氏、山本信一氏によるトークセッションも実施された。
 
展示情報ページ

空間へのドローイング:ZERO-SITE Takanawa Gateway

「空間へのドローイング」は、VR機器をメディウムとして扱い、空間を支持体として描くドローイングのプロジェクトである。質量を持たず、どこにでも出現させる事ができるというデジタルデータの特性を持ったドローイングに場所固有性という物理的制限を与え、逆説的に絵画としての実体を形成することを試みる。
2025年7月27日に開催された「NEO-CITY ART EXHIBITION」では、会場であるZERO-SITEにおいて、その空間にしか存在することができない作品を制作、展示した。8月2日までの期間限定であるZERO-SITEという空間に依存する作品であるため、本来朽ちることのないデジタルデータであるにもかかわらず、8月2日をもってその存在は消滅した。
あるいは、拠り所を失った地縛霊のような存在になったのかもしれない。


空間へのドローイング: 高輪ゲートウェイ駅
高輪ゲートウェイ駅は、2020年3月14日に一次開業し、周辺開発を経て2025年3月27日、TAKANAWA GATEWAY CITY第1期の街びらきと同時に全面開業を迎えた、JR東日本 山手線で49年ぶりの新駅である。
隈研吾氏が建築デザインを手がけ、「駅まち一体」を掲げる21世紀型アーバンデザインのモデルケースとして計画された。
駅構内には人工芝が敷かれた「Eki Park」が設けられている。平日には大人が休息したり横になっている姿が多く見られたが、休日には子どもたちが駆け回り、活気に満ちていた。
Eki Parkで実施した空間へのドローイングでは、足元のクッション性が筆致にも影響を与えたようである。
人工芝や駅構内に使用された木材、開業時賛否両論を呼んだ明朝体の駅名看板などからテクスチャを採取し、ドローイングのマテリアルとして取り込んだ。さらに、Eki Park横に設置されたストリートピアノには、地元の子どもたちの手形によるカラフルな装飾が施されており、その意匠もテクスチャとして用いている。
いずれもまだ真新しく、これまで「空間へのドローイング」でマチエールとして利用してきた、蓄積された汚れや摩耗、剥落など「場所の記憶」や「時間の痕跡」を内包するような絵肌を見出す事は難しかったが、これから重ねられていく歴史の出発点をテクスチャとして記録した。

空間へのドローイング: TAKANAWA GATEWAY CITY
高輪ゲートウェイ駅の改札を出ると、正面にTAKANAWA GATEWAY CITY内最大の広場であるGateway Parkがある。
7月上旬に空間へのドローイングを実行した時は、エマニュエル・ムホー氏による作品「100 colors no.53 100色の道」が設置されており、Gateway Parkという場所の色彩を支配していた。その風景やテクスチャを採取し、ドローイングのマチエールとして纏わせた。
7月末、作品撮影のために再訪したときには設置期間が終了しており、風景は一変していた。アートは都市の景観を形づくる。そしてあっさりと失われる。このドローイングには、今はもう存在しない風景の記憶がテクスチャとして残っている。
ゲートウェイシティ内には、iinoという自動走行モビリティが走っている。iinoに乗車しながら描いた線は、時速5kmを保って動き続けるモビリティが描く軌道をトレースしている。乗車する人間にはiinoの行き先を指示する事はできない。どこに向かっているのかも示されない。iinoが言う。「ここではたくさんのロボットが活躍しています。人がロボットと共にある風景がこの街では日常風景の一つです。」

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